目からウロコ

Posted by музыка on 09.2010 コンサート   0 comments   0 trackback
「古楽の楽しみ マルコム・ビルソン教授の『楽譜の読み方』~フォルテピアノのスペシャリストが語り、奏でる温故知新」というレクチャーコンサートに行ってきました。

私はオルガンは1年ほど勉強しましたが、フォルテピアノには触れたこともありません。
演奏会も、クラヴサンやオルガンは聴いても、フォルテピアノって行ったことないかも。
不勉強ですね・・・。
というわけで、私にとっては新しいことばかり、目からウロコの連続で、とにかく面白かった!

「ピアノ」ってどんな楽器?
そう訊かれて私たちが思い浮かべるものは、メーカーやサイズに相違はあれど、おそらく同じようなイメージですよね。
黒くて、羽のような形をしていて、3本足で、88鍵あって、足元にペダルが2本ないしは3本。
演奏する側としては、
「これとあれとが同じ『ピアノ』という名前で一括りにされるやなんて、ありえへん!」
なんて思うこともありますが、基本的には、同じような形、同じような構造です。

でも、フォルテピアノには一律の「規格」というものがありません。
制作された国、年代によって全然違う。
と、そこいらへんまでは一応知識としては知っているつもりでしたが、実際どう違うか、というのは未知の世界でした。

さて、ここからがレクチャーの内容です!

フォルテピアノは、イギリス・フランス系とウィーン・ドイツ系の2系統に分かれ、それぞれメカニズムが違う。
ウィーン・ドイツ系は、足のペダルではなく膝てこがあり、ダンパー(弾いた後の弦の振動を止める装置)の効きがよいため、音がクリアで精確。
イギリス・フランス系は、大きな充実した音が出るけれど、鍵盤が重く、掴むように弾かなければいけない。
ダンパーの効きが緩やかなので、楽器の中に残響というか音の余韻が長く残る。
作曲家シューマンの奥さんで女流ピアニストだったクララ・シューマンは普段ウィーン系の楽器を弾いていたため、フランスに演奏旅行に行った時、あまりの楽器の違いに「弾けない」と言ったそうな。
それくらい違うのだそうです。
そして、その違いは19世紀まで続いた、と。

そんなこと言われたって、豆知識としては面白いけれど、いまいちピンときません・・・よね?

そこで、フォルテピアノ登場!

ブロードウッド

これがレクチャーコンサートで使われた楽器で、1816年ロンドンで作られたブロードウッド社製です。
ベートーヴェンが晩年に使っていた楽器と同じメーカー、製作年もたったの1年違い。
だから、ベートーヴェンが作曲する時に想定していた音と近い、かもしれません。
(ただし、そのピアノを所有していた頃ベートーヴェンは既に耳が聞こえなくなっていたため、彼の頭の中では全く別の音が流れていた可能性も大きいです。)

後半のコンサートは、クラーマーのモーツァルトの「魔笛」の主題による変奏曲、ハイドンのピアノソナタ第60番、ベートーヴェンのピアノソナタ第4番、という雰囲気の異なった3曲を組み合わせたプログラムで、曲と楽器との相性がハッキリと聞こえてきました。
特にハイドンとベートーヴェン!
歯切れがよく、軽やかですばやい切り返しが必要なハイドンのソナタでは、音が楽器の中にかなり長い時間残ってしまうので、全くパキッとした感じがせず、場面転換のポイントでずるずると前の場面の和音を引きずっている感じで、正直言って聴いていて欲求不満になりました。
それが、ベートーヴェンになると、楽器の中に残る音が響きを豊かにし、分厚い和声を作っていて、めっちゃいいんです!
聴いていて、
「ベートーヴェンはイギリス・フランス系の楽器を、ハイドンはウィーン・ドイツ系の楽器を使っていたんや」
とよ~くわかりました。
知識として頭で理解する、というのではなく、身体が、耳が、すっと受け入れた感じ。

あと、レクチャーでは触れられていなかったのですが、ベートーヴェンを弾いていると、sf(スフォルツァンド)やfp(フォルテピアノ)という指示がしつこいくらい出てきます。
スフォルツァンドはその音を強調し重きを置く、フォルテピアノはその音を大きな音で弾いた直後にボリュームを絞って小さくする、という指示。
ソロに限らず、室内楽のレッスンでも、
「ベートーヴェンのsfやfpは必ず守りなさい!!!」
とよく注意されてはいたものの、何故そうしなければいけないのかが、今から思えばきちんと理解できていませんでした。
楽譜にそう書かれているし、先生がそう言うから守っているのであって、自分自身の心の底からの欲求ではなかった、というのが正直なところ。

でも、この日ブロードウッドの内側で鳴っている残響を聴いていて、わかりました!
sfやfpで強調しなかったら埋もれてしまって聴き手に伝わらない表情が、ここにはたくさん隠されている、って。
sfもfpも、そこに書かれるべくして書かれた、絶対に必要なものなんや、と。
これって、ピアノを弾かない人からしてみれば、おそらく
「は???」
という内容やとは思いますが、私にとっては、長年の疑問が解けた感動の瞬間でした。

そして、もう一つの目からウロコ。
ベートーヴェンの2番のソナタの第2楽章や、この日のプログラムの4番の第2楽章には、右手はレガートでゆっくりたっぷり歌い、左手はスタッカート、という部分がでてきます。
でも、これってめっちゃ弾きにくいんです・・・(涙)。
天井が高く、湿度が低くて残響が多いヨーロッパならまだしも、日本ではほんと大変。
右手のメロディを豊かに歌わせるためにペダルを使うか、左手のスタッカートを優先すべきか。
きっと、このバランス調整で悩んだことあるピアニストはたくさんいるはず。

それが、なんとこのブロードウッドの右ペダルは真ん中で分割されていて、右半分だけ踏めば高音域のみ、左半分だけ踏めば低音域のみにペダルをかけられる!
普通に(=現代のペダルのように)踏めば、左右同時に踏むことになるので、全音域にペダルがかかります。
ということは、右手レガート、左手スタッカートでも、全く困らない。
ベートーヴェンが初期の2番や4番のソナタを作曲した時にはもちろん別の楽器を使っていたはずですが、きっとこういうペダルを念頭においていたから、現代のピアノではとても弾きにくい、ああいう2楽章になったんやろうなぁ、と考えると、ほんと「納得!」です。

最後にもう一つ。
これは私の勝手な印象ですが、フォルテピアノって、鍵盤と弦との距離が現代のピアノよりも近い気がする!
物理的な距離ではなく、
「こんな風に弾きたいねん」
「こんな音を出したいねん」
という思いが、指先から弦にダイレクトに伝わる、というか。
現代ピアノの場合は、インプット(=指先)とアウトプット(=音)の間に何段階かあるような気が・・・。

うぅぅ~、いろんなフォルテピアノに触ってみたい。
とにかく、百聞は一見に如かずのレクチャーコンサートでした!


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